素材に関する疑問
- どういう材質を使ったらいいのか解りません。
- まず図面があれば見せてください。コンフィデンシャルであれば数字だけで結構です。
あとはこちらからの質問にお答えいただければ、最適な材料を提案させていただきます。
通常、バネ材ではSUS304、316、ピアノ線、鋼線がもっとも多く使われ、また入手しやすい材料となっています。
ここで問題なのはまずコストです。製品の品質向上のため良い(特殊)材料を使いますと、割高になります。
1Kg40万円というのもありますので、設計変更で緩和できる場合もあります。
次にあらゆる材質の中で、図面のスペックに対して生産作業性の悪いものがあり、結果としてコストが上がってしまうこともあります。
この場合でもこちらで全て材質の選択から、設計の見直しにいたるまで、無料でアドバイスいたします。
- ステンレスでピアノ線なみのバネ荷重が欲しいのですが。
- 通常バネメーカーでは、ステンレスとしてSUS304を最も多く使います。304材はピアノ線にくらべると、1割強バネ荷重が低く出てしまいます。
そこでステンレスバネ材として、強度を持たすためクロムとニッケルを減らした材料、SUS301を使うことによりピアノ線並の荷重を確保できます。
しかし申し訳ありませんがコスト的に5〜6割高になってしまいます。
耐蝕性に関しては、強さ優先のため304材よりも若干落ちるようですが、通常の使用では問題ありません。
他にもいろいろな材質があるのですが、納期、コストなど入手しにくい状況などから当社ではSUS301を主に扱っています。
最後にですが取り付けスペース的に余裕がありましたら、材料を変更せずに設計を変えることで、お望みの荷重を出せる場合がありますので、
ぜひ御相談ください。よろこんで設計変更トライいたします。
- 引きバネのフックが折れて困っています。
- 殆んどは設計に対する使用状況が過酷であると、メーカー側として判断しています。
当社の引きバネは決してフックが折れません!と、宣伝したいのですが残念ながら、絶対に折れないバネはありません。
自社製品であれば、その使用状況調査、製作段階追跡、製品破損部位の顕微鏡画像などから、推測いたしまして材質や設計見直し、フック部形状変更などお客様に有益な情報をすぐフィードバックし、代替検討させていただきます。他社製品におきましても同じく最善策を提案いたします。
コイル部分からフック部分に、立ち上がる場所付近が最も応力が発生し折れやすい箇所です。その立ち上がりを工夫したものや、フックを二重にしたものも用意しておりますので。お気軽にお問い合わせください。
- バネ材は針金とどこが違うのですか?
- 針金とは一般的に軟鋼線に亜鉛メッキしたもので、素手で扱え、とても柔らかくバネに加工できる性質がありません。
また同じ箇所で曲げを繰り返すと、加工硬化で硬くなり折れてしまいます。要するに柔らかい金属素材ではバネになりにくいということです。
絶対にならないかというと、例外もありますのでそれはまた別の機会に回答いたします。
バネ材として一般的なピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線は簡単に言いますと、母材がもともと高級な訳です。
母材をまずパテンチングと呼ばれる熱処理し酸洗い、表面処理、常温伸線加工と針金とは製造方法も異なります。
こうして始めから許容応力が高く金属疲労にも強い材質を、スタンダードとしてバネメーカーでは使っています。
調べて解ったことですが、針金の歴史ってすごく古くからあるものだと、びっくりしました。
- 加工硬化ってなんですか?
- 冷間加工した際の殆どの金属にこの性質があります。
簡単に説明いたしますと、針金を数回折り曲げては戻していると折れてしまいます。
なぜ折れたのか?硬くなったから折れたのです。
鉄は数割ほどしか加工硬化しませんんが、オーステナイト系のステンレスでは硬さで3倍以上、引っ張り強さで2〜4倍も硬化するものがあります。
ステンレス容器などの深絞りなどでは、HV400以上の硬さになりハイスのドリルでは容易に孔を開けることができなくなるくらいです。
磁化の発生もあります。あくまで結晶レベルで分子レベルの変化ではありません。
加工硬化を利用した代表的なものは、完成したバネを更に強くするセッチング加工ということになります。
我々のバネ材も購入した際には、伸線による加工硬化が残っています。ですから、最初からバネ材は硬く感じるのです。
他金属加工業界様でも数えきれないほど、この性質を利用されているものがありますので、調べてみると面白いかも知れません。
- 疲労破壊と遅れ破壊はどう違うのですか?
- ●疲労破壊とは?
静的荷重を受けているバネが、振動や曲げ荷重を繰り返し受けると、その荷重が弾性域内であっても、その後突然破断します。
これを動的疲労破壊といいます。
バネが振動等の動的荷重を繰り返し受けているうちに、バネの一部に肉眼では発見出来ない様な微細な亀裂が入り動的荷重の繰り
返しにより亀裂が広がり荷重に耐えきれなくなり破断します。
当社では応力設計の見直しや材料の変更、使用方法の再考、熱処理の徹底化をお勧めします。
●遅れ破壊とは?
安定して静的荷重を受けている線バネや板バネが、時間の経過と共に一定の荷重内において、何の前兆も無く突然破断します。
これを静的疲労破壊といいます。
基本的には水素脆性による材質の脆化現象です。一般的に高強度の材料ほどこの可能性が高くなりますので注意が必要です。
腐食、溶接、酸洗浄、電気メッキなどによる水素脆性が原因であるため、水素が入らない様にする、又除去する事です。
@ 特に鍍金工程で入る事が多いので、ベーキング処理を必ずおこなうこと。
A 使用環境により、電食等の腐食による水素脆性の可能性もあるため塗装や油塗布等の防錆処理を十分におこなう事が必要です。
- C-276φ0.16、604PHφ0.16の価格を教えてください。
- かなり細い材料ですね。どういった場所に使われるのかこちらも興味津々です。
C-276(ハステロイ)、604PH(コバルト基ばね材料)と私たちは呼んでいます。
どちらも高強度・高耐食の用途に使われます。
さて気になる御値段のほうですが、材料メーカー曰く滅多に出荷されることがないということで受注生産に近いものがあるとのことです。
最小納入ロットにつきましても、メーカーの言うなりになります。
現時点H23年12月では・・・
●C-276φ0.16 最小1kg〜 @103,500円
●604PHφ0.16 最小10kg〜 @930,000円
いかがでしょうか?これに見合うお見積もりを納得していただけるかどうかにかかってきますね。
製造段階でのφ0.16という細さの作業性も見積り内容に加算しないといけないところです。